あなたは、テレビや新聞で「成年後見」という言葉を聞いたことがありますか?
私は父の成年後見人になってから、そろそろ5年以上経ちます。
選定されて数年は成年後見人として何かしようとしても、具体的にどうすればいいのかわかりませんでした。
調べてもなかなか答えにたどり着けなかったり、答えを知るまでに時間がかかったり・・・
今回は、「成年後見」という制度を専門的に詳しく掘り下げるのではなく、成年後見人として実際に知っておきたいことを前編と後編に分けてご紹介いたします。
前編:成年後見人ってご存知ですか?
1.成年後見人って何?
成年後見人とは、成年後見制度によって選定された人のことで、成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害等によって判断能力が不十分な人を保護・支援する制度のことをいいます。
この制度を使って行う行為は、本人の貯金や土地などの財産管理、売買等にかかわる契約、本人の意思が必要になる協議などです。
成年後見制度には以下の2種類があります。
- 判断力が不十分になる前に本人が指名する「任意後見制度」。
- 判断力が不十分になってから家庭裁判所が選定する「法定後見制度」。
どちらも公的な手続きを通して、東京法務局で指名・選定された人の情報が管理されています。「私がこの人の後見人です」とか「この子が私の後見人です」と主張するだけでは効果はありませんので覚えておきましょう。
「法定後見制度」は更に「後見」「保佐」「補助」に分かれており、本人の判断能力に応じて選べるようになっています。
- 判断能力が欠如している・・・「後見」
- 判断能力が著しく低下している・・・「保佐」
- 判断能力が低下している・・・「補助」
また制度によって、その保護・支援できる内容が違います。
この違いによって選定された人は「成年後見人」「成年保佐人」「成年補助人」と呼ばれ、総称して「成年後見人等」と呼ばれます。
2.「成年後見人等」は誰が選ばれるの?
成年後見人として選定される候補者。
- 本人の親族
- 法律・福祉の専門家などその他の第三者
- 福祉関係の公益法人その他法人
成年後見人等は複数人選ばれることもあり、成年後見人等を監督する「成年後見監督人」が選ばれることもあります。
3.どんな時に成年後見制度が必要になるの?
成年後見制度は、本人が自分の判断で財産を管理できなくなった場合に必要になります。たとえ親子であっても、勝手に本人の預金を引き出したり、家や土地を売ったりすることはできません。
例えば・・・
認知症で施設に入っている人の自宅が老朽化しており、離れた場所で暮らしている子どもたちが、その家を処分したいと考えた時、子どもたちは本人から家や土地を相続しなければ勝手に処分することができません。もちろん本人も認知症のため判断ができない状態です。
このような場合に、成年後見制度が必要となってきます。
また、このような財産のあるパターンばかりでもありません。
私の父は脳梗塞を起こした結果、半身不随・高知能障害を患ったため、判断力を欠如しました。父が要介護度5の1級障害者となったため、国から受け取る障害年金などのお金を管理するために、私は父の成年後見人になりました。
つまり、財産の有無にかかわらず、成年後見制度が必要となる可能性は誰にでもあるということです。
4.成年後見制度が必要となったらどうしたらいいの?
- 「法定後見」の場合は家庭裁判所に申立てを行います。
→ 申立手数料・登記手数料等の料金や各種書類が必要 - 「任意後見」の場合は、公証役場で任意契約を結びます。
→ 公正証書の作成費用等が必要
どちらの場合も、法務省のHPには「家庭裁判所や公証役場に確認してください」と書いてあります。
しかし私の場合は、家庭裁判所や公証役場に確認するよりも、まずは司法書士に相談することにしました。成年後見人は、本人が判断力を回復するか死亡するまで務めなければいけませんので、そのリスクや責任をしっかり聞いておくことができ、成年後見人に必要な書類の作成も助けてくれます。
5.法定後見の選定までどのくらいかかるの?
「家庭裁判所へ申立て → 審理 → 選任 → 確定」という段階を踏んで、成年後見人として活動できます。
この期間はそれぞれ違うので、法務省のHPでも「一概ではないが4か月以内」と書いてあります。私の場合には審理に時間がかかって、丸4か月かかったと記憶しています。
6.前編のまとめ
ざっくりとではありますが、今回は成年後見人って何なのかという概要を紹介しました。
さらに詳しく知りたいという方は、法務省のHPをご覧いただくか、弁護士や司法書士、家庭裁判所の後見センター、最寄りの市町村の社会福祉協議会や地域包括支援センター等に相談してみてくださいね。
後編では、法定成年後見人として選定された私の1年のスケジュールを基に、「成年後見人の職務とは何か?」を具体的に紹介したいと思います。これから成年後見人になる人はもちろん、成年後見人になる可能性のある人も是非、参考にしてみてください。
*****今回こちらのコラムを書いていただいた方です*****